答 辞

 僕達は今日、海城中学校を卒業します。

 厳しい中学入試を経て、少し大きめだけれど新品の制服を着て、親と一緒に校門をくぐり、三年前、このアリーナでの入学式に出席したのが今でも鮮明に思い出され、懐かしい気がします。そしてその折のこととしてとりわけ鮮明に思い出されるのが、学年主任の入学式での挨拶です。「自由と公正」についての話を聞いた時、僕は真の自由とはそういうものであったのかと軽く衝撃を受けました。そして、最後の言葉は「ウェルカム」でした。形だけではなく、本当に海城は僕達を受け入れてくれた、そのことが実感できた瞬間でした。素直に嬉しかったです。その入学式からもう三年が経ちます。その三年間で僕達は様々なことを教わり、学び、感じて成長しました。入学して最初の大きな行事は海の家でした。先生方やOBの先輩方、そして知り合ってまだ間もない友達とのコミュニケーションのとり方、コラボレーションして目標を達成すること、自分の行動をシミュレートすることの三つを自覚し、遠泳を全員で列を崩さず泳ぎ切ることで、皆で一つの目標を達成することの喜びだけでなく、その難しさについても学びました。海の家での経験はその後の文化祭、体育祭に大いに生きました。文化祭では各クラスが試行錯誤して一つのものを作り出すことができただけでなく、そのことに対してお客さんから高い評価を得ました。この頃にはクラスメイト同士の心の壁はもうほとんどなくなっていたように思います。体育祭では他学年とコミュニケーションをとりながら、一人一人が競技に一生懸命取り組み、盛り上がりました。また、僕達の学年は海城で初めてPAに取り組んだ学年でもあります。PAでは障害物をクリアするにあたって、仲間を信じ切り、自らを委ねることが求められます。そこで新たに仲間を信頼することの大切さやチャレンジ精神について学ぶことができました。そして、僕達は中学最上級学年になりました。今年度の学年の目標は「自他すなわち自己と他者の両方をエンカレッジ、勇気づける」ことでした。ともすると中弛みが起きやすい中学三年という学年にあたって、僕達はそれを克服するために自覚を持って自らを勇気づけることを意識しました。また、これまでと一八十度立場が変わり、先輩として後輩である皆さんを導く責任から他者を勇気づけることが求められたのです。今年度の文化祭や体育祭では僕達がリーダーシップを執り、後輩を引っ張っていかなくてはなりませんでした。上手くいかないこともありましたが、最終的に一つのものを皆で作り上げることができました。そこで僕達は、考え方が異なる人々が仮にいたとしてもそれを一方的に排除するのではなく、何らかの共通点を見出し、これをきっかけに相手を巻き込んでいく「インクルージョン」ということを学びました。また、中学生活をしめくくる行事である修学旅行では、広島、神戸、京都、奈良などで人に出会い、様々な物を見、多くの自然に触れることで、色々なことを感じ取り、自分自身を成長させることができました。広島では、実際に原爆ドームや資料館へ行ったり、被爆者の方の体験を生で聞いたりすることで、事前学習では知り得なかった二度と繰り返してはいけない原爆の歴史、原爆の本当のおそろしさを知識としてではなく、肌で感じ取ることができました。また、京都・奈良での班別の自由行動では、事前に班員同士で話し合い、1日と半日分、見学する場所から昼食を採る場所まで細かく行程を決めました。そしてそれを実行する上で、自由というものに常につきまとう「責任」、「自由と公正」について改めて学ぶことができました。

 このように、僕達は海城での様々な行事から多くのことを学びました。しかし、僕達だけがいくら頑張ってもこれほど多くのことを学ぶことはできなかったでしょう。そこにはいつも、学年主任や担任の先生方の教えやサポートがありました。入学当初から僕達の学年は「自由と公正」、「聴く姿勢」の二つをいつも根底において、それに付随する形で様々なことを学んできた気がします。僕達はその二つを基本とした学びを経て、「自分にとって本当に善きこと・幸せなこと」をつかみとる「真の自由人」を目指しています。その目標への道のりは入学当時よりは縮まりましたが、中学を卒業する今でもまだ半分もきていないように思います。目標とする地点へいつたどり着けるかは分からないけれど、僕達はずっとその道を歩もうと思います。

 在校生の皆さん、先程皆さんから頂いた送辞の言葉は、次のステップへ進む僕達卒業生の力となりました。本当にありがとうございました。海城は先輩と後輩という縦の関係を持つ機会が限られているため、先輩として教えてあげられることが多くはなかったかもしれません。その分、最後に言ってあげられることは、海城から学べることは決して勉強だけではないということです。では何が学べるのでしょうか。それは、先生方の教え、自らの海城での経験から自分で探すのです。必ずそれはあります。一人一人、学びとることは違うかもしれないけれど、勉強だけではもったいないです。どうぞ皆さん、PAで学んだように様々なことにチャレンジして下さい。そして、海城中学校を自分たちのやり方で、自分たちの思うように発展させていって下さい。

 本日、僕達のためにこのような盛大な式を執り行って下さったことに深く感謝いたします。そして、三年間熱心にあるいは影ながらご指導して下さった先生方、縁の下の力持ちで学校を見えないところから支えて下さった全ての方々に、心からお礼を申し上げます。

 僕達卒業生二百六十九名は、三年もの間、ここ海城中学校で同じ時間を共有してきました。そこに一つの区切りがつきます。たとえ今後進む道が分かれたとしても、貴重な中学校生活を共にした仲間として、いつまでも、かけがえのない友達としてあり続けることを深く心に刻んでまた歩み始めようと思います。

 最後になりました。「ウェルカム」と言って下さった海城中学校、ありがとうございました。

 平成二十年三月十八日

                第六十一回卒業生代表

                        内山幹朗