• 中学総合講座「生きること 働くこと 考えること—ゲストを交えて拓き合う 」 第3回

中学総合講座「生きること 働くこと 考えること—ゲストを交えて拓き合う 」 第3回

2017.02.27

  • 講習

総合講座の第三回目は、絵本作家のとよたかずひこさんをお迎えし、「仕事としての絵本創り―紙芝居を演じ、絵本を読み語りながら作品の背景を探ります」というテーマでお話を伺いました。

とよたさんは、フリーのイラストレーターを経て、ご長女の誕生をきっかけに絵本作家に転身されました。『でんしゃにのって』や、『どんどこももんちゃん』『わにのバルボン』のシリーズなど、多数の著書があります。

今回の講座では最初に、『はい、タッチ』という紙芝居の読み聞かせをしていただきました。

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とよたさんの巧みな語り口調と、絵本とはまた違って、一枚の絵をめくり終わるまでその絵の全体像が見えないという、紙芝居ならではの構造を生かした意外な展開に、生徒は自分の想像とのギャップの面白さを感じ、すぐに引き込まれたようでした。ある生徒は、「中学生を相手に紙芝居の読み聞かせをしてくださると聞いて少し驚いたが、聞いているうちに夢中になった、想像以上に楽しかった」と話していました。

その後もいくつかの作品の読み聞かせをしていただき、それぞれの作品が生まれた背景のエピソードや、登場人物の命名の裏話などを紹介されました。そして、絵本は「絵空事」を描いているからこそ、細部のリアリティをおろそかにしないことが大切であり、いかに外にあるものを噛み砕いて自分なりに消化して取り込み、それを使えるようになるかが大事であるなどと、ご自身の創作上の信念もお話しされました。

そのなかで特に、「作品をつくることは自己表現ではない」という言葉が大変印象的でした。創作といえば、ともすれば自己表現と密接に結びついているものと考えがちですが、それではプロフェッショナルといえないという、とよたさんの創作への厳しい態度に感銘を受けました。

以下に授業を受けた生徒の感想を引用します。

「僕が昔お母さんに読んでもらった絵本だったと、帰って話しをしたら言われた。昔読んでいた記憶はなかったけれど、今読んでも楽しむことができた。子供用の絵本だったけれども、次に何が出てくるのか考えるのが面白かった。」

「今回、とよたかずひこさんの読み聞かせを聞いて、とても懐かしい気持ちにさせられた。絵本はとても簡単で単純なものだと思っていたが、その奥には、作者の思いや様々な試行錯誤の末に作られているのだと感じた。」

「『行き詰まったときには切り口を変える。すると開けてくる』という言葉が心に残りました。僕も人生の中で行き詰まることが多々あると思います。その時にはこの言葉を思い出して、切り口を変えてみようと思いました。」

最後になりましたが、大変ご多忙な中、生徒たちのためにお話しくださったとよたさんに厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

四回目の次回は、「芸術の力のありかを求めて―絵と写真の交差から」というテーマで、画家の片山高志さんと、写真家の喜多村みかさんのお二方をお迎えしてお話を伺う予定です。

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