浅虫臨海実習

2014.08.06

  • 生物部

去る7月27〜30日、東北大学大学院生命科学研究科付属浅虫海洋生物学教育研究センターにて、臨海実習を行いました。
本実習の目的は、腰を据えてじっくり陸奥湾潮間帯の生物の形態や胚発生を観察したり、簡単な実験発生学を学んだりすることで、今後の生物部での活動につなげること。さらに自然豊かな臨海実験所で日々研究を行っている先生方との交流を深めることにより、臨海実験所での研究の意義を理解するとともに、自らの進路について考えるきっかけとすることです。
陸奥湾を臨む絶好の環境の下、中3〜高2の生物部員22名が、センターの協力をいただきながら、意欲的に実習に取り組みました。


(写真1)センター前の裸島と夕日


【1日目】
まずは、高校の教科書に必ず登場するウニの受精と発生。学校の授業での観察は時間の制約があり、なかなか丁寧に観察することができないもどかしさがあります。今回は、美濃川拓哉先生の指導の下、時間とともに精子の運動能が低下していくようすや、受精膜の上がり方(見え方)と精子進入点との関係、透明層の見え方とその機能、分裂装置の見え方と卵割との関係、まさに受精卵が細胞質分裂する10分間のようす、等々、かなり細かいところまで熱心に観察し、学びとりました。全員がマウスピペットを使わせていただき、ごく微量の精子をとったり、直径0.1 mm程の受精卵を1個ずつ扱ったりする術を学びました。贅沢な経験です。


(写真2)キタムラサキウニの2細胞期胚。胚の直径は約0.1 mm

卵割の合間に、美濃川先生より、動物の発生と進化の関係について講義をしていただきました。動物園は「哺乳」動物園であり、動物の多様性は、磯に生きる多様な生物から学ぶことができるという導入が印象的でした。高校の教科書には登場しない半索動物ギボシムシの話について、とりわけ生徒は興味津々だったようです。


(写真3)美濃川先生の講義

午前0時を超えても、上級生を中心にウニの胚発生の観察を継続。発生(細胞分裂)は人間を待ってはくれません。学校ではできない経験です。

【2日目】
午前中は大潮の干潮の時間に合わせて、センター前の潮間帯の生物の観察と採集。さらに、ネットを用いたプランクトンの採集も行いました。
一般に磯観察というと、肉眼で容易に観察でき、目の前で派手に動く魚類、甲殻類(エビやカニ)に気持ちを奪われがちです。事実、生徒達も最初はそうでした。しかし、前日の美濃川先生の講義を思い出したのか、時間がたつにつれ、こぶし大の石や貝殻、藻類に付着する微小動物に関心を持ち始めました。これらを実習室に持ち帰り、午後に顕微鏡下で観察することに。


(写真4)磯観察のようす

午後の実習室での熱心な観察のようすには、私も感心させられました。大学生の実習でもこんなに長時間集中力を切らすことなく顕微鏡での観察に熱中することはないと、美濃川先生からもお褒めの言葉を頂戴しました。節足動物や軟体動物は言うまでもなく、刺胞動物から扁形動物、環形動物、等、多種多様な動物を顕微鏡下で発見することができたようです。
プランクトンネットからは、ホヤのオタマジャクシ幼生やヒトデのビピンナリア幼生、キタムラサキウニのプルテウス幼生、クモヒトデのオフィオプルテウス幼生も発見され、一同大盛り上がり。美濃川先生のご厚意により、特別に、ブンブク(ウニのなかま)の幼生や、ギボシムシのトルナリア幼生、そしてギボシムシの成体を見せていただきました。新口動物の系統関係を意識しながら観察できたことと思います。

夜は、希望者がヘイケボタルの観察へ。徒歩往復3時間の強行軍。生徒たちの体力もなかなかのものです。

【3日目】
午前中は2グループに分かれての実習。
グループ1は美濃川先生の指導の下、実習室でドリーシュの実験。ウニ2細胞期胚を分割したとき、それぞれの半胚はどのように発生するのかという古典的実験です。受精膜を溶かしたり、受精卵を1個ずつカルシウム除去海水の入ったシャーレに移し替えたり、顕微鏡下でガラス針を用いたりと、慣れるまで苦労の連続。その後数回の卵割パターンがどうなったか、さらにその後の発生はどうなったのか、これらのことからどのようなことが考えられるのか。シンプルな実験ですが、結果と考察が重要です。
グループ2は、センターから徒歩圏内にある浅虫温泉森林公園の散策。中1山の家で標高約1,500 メートルの志賀高原に行きますが、そこでみられるシラカンバやミズナラが、青森市では平地でふつうにみられます。垂直分布と水平分布について実感できたことと思います。

午後は、経塚啓一郎先生の指導の下、陸奥湾名産のホタテガイの体制を、解剖しながら学びました。ホタテガイは、二枚貝の中ではずいぶん特殊化していますが、まずは左右相称動物における基本である頭尾軸、背腹軸、左右軸を確認。その後、外套膜、眼点、口から肛門、中腸腺、激しく拍動する心臓、退化した腹足等を順次観察しました。


(写真5)経塚先生による、ホタテガイの解剖の演示

さらに、経塚先生の専門である卵成熟や受精とカルシウムイオンとの関係について、講義をしていただきました。分子レベルの話もあり少し難しかったかもしれませんが、熱心に聴き入っていました。

夜も経塚先生も指導の下、真っ暗な中、桟橋でウミホタル、ヤコウチュウの採集。その後、実習室に戻り発光の観察。はじめて見た生徒も少なくないようで、幻想的な光に(男子だけで)目を奪われていました。この日も盛りだくさんの1日でした。

【4日目】
お世話になったセンターの皆様に挨拶をして退所後、近くの浅虫水族館へ。タッチプールにて、イトマキヒトデをホタテガイに近づけてみると、数秒後にホタテガイは逃避行動を開始。本当にホタテガイはヒトデのサポニンを検知しているのでしょうか。そもそも、ホタテガイがタッチプールにいるのが浅虫らしいなと感じました。

4日間、美濃川先生、経塚先生はじめ、センターの皆様には大変お世話になりました。食事もボリューム満点で非常に美味しく、おかげさまで、1人も体調を崩すことはありませんでした。お世話になったセンターの皆様に、この場を借りてあらためて御礼申し上げます。
参加生徒は本実習の目的をはたせたでしょうか。本実習が生徒達の今後の学びのきっかけになることを切に願っています。
なお、本実習で学んだこと、体験したことの詳細が気になる方は、9月13〜14日の海城祭にて、是非、生物部員に聞いてみてください。
(引率教員)


(写真6)最後に記念写真。おつかれさまでした。