理科 地学 伊豆巡検合宿

2018.04.07

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理科・地学では、春休みの巡検合宿として4月2日から2泊3日の日程で伊豆半島をまわりました。伊豆半島は日本で唯一フィリピン海プレートの上にのっており、日本ジオパークにも認定されていることからもわかるように、多くの地学的な見どころがあります。もともと2000万年ほど前に、南洋の海底火山群として存在していたものが、プレートの動きとともに本州に衝突し、60万年前ころに現在のような半島の形になった場所です。

一日目は「伊豆東部火山群」の代表例である大室山に行きました。伊豆東部には、国内では珍しい独立単成火山群が形成されており、これらは20万年前以降の、伊豆半島の中では最も新しい時代の火山活動によってできています。4000年前に噴火してできた大室山は「スコリア丘」の代表例として、しばしば地学の教科書などにも取り上げられることのある火山です。

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大室山には徒歩で登ることはできず、必ずリフトを使います。

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山頂ではお鉢巡りをすることができます。1周約1㎞の行程です。

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標高580mと、さほど高い山ではありませんが、山頂からは360°周囲の景色を一望でき、小室山や一碧湖、矢筈山など、同じ時期の火山活動によってできた地形を観察できます。

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ちょうど桜の時期で、満開の桜越しに大室山を楽しむことができました。

次に、城ヶ崎海岸を見学しました。ここは、約4000年前に噴火した大室山から大量の溶岩が相模灘に流れ込むことでできており、複雑な溶岩地形を観察することができます。

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大室山の溶岩流が海に流れ込んでいく際にできた柱状節理を観察します。

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スリル満点の橋立吊り橋です。

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見事な五角形・六角形の柱状節理の上を歩くことができました。

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柱状節理の窪みにできた潮だまりではアメフラシも見られました。

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宿のお食事は大変おいしく、ご主人からは興味深い話をいろいろ教えていただきました。

2日目は、伊豆半島ジオガイド協会のガイドさんに、中伊豆を中心に案内してもらいました。こちらは、1日目の東部火山群よりも古い時代の火山活動が主で、60万年前から20万年前ほどにできた天城山や達磨山といった大型火山がある地域です。はじめにジオパークミュージアムで概略を学んだあと、白鳥山、達磨山、下白岩、旭滝、梶山、浄蓮の滝の各所をめぐる行程です。

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伊豆半島ジオパークミュージアム「ジオリア」では、伊豆半島がいかに特異で、活動的な場所であるかが学べたことと思います。

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説明にも熱心に聞き入っていました。

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白鳥山では、海底火山地下の火道で冷え固まったマグマがつくる柱状節理を見学しました。その圧倒的なスケールに生徒たちも興奮していました。

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達磨山からは視界が良ければ、富士山や箱根山、丹沢山地などを含め、伊豆半島がたどった歴史の痕跡を一望できる場所なのですが、この日は残念ながら春霞に覆われてしまっていました。

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下白岩では、レピドシクリナという有孔虫の化石が地層中に含まれています。これは、伊豆半島が遠く南の太平洋に位置していたことの直接的な証拠となるものです。

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人工的に積み上げた石のようにも見えますが、横倒しになった柱状節理を流れ落ちているのが旭滝です。

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こちらは梶山のタービダイトです。まだ伊豆が深海にあったころ、海底斜面に堆積した土砂が「乱泥流」として流れたことによってできたものです。

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演歌の歌詞にも出てくる有名な「浄蓮の滝」は、約1万7000年前に鉢窪山が噴火し、流れ出た溶岩が谷を埋めることによってできています。

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ガイドさんが注目したのは、右の大きな流れではなく、左の小さな流れのほうで、こちらは湧水の流れです。このきれいな湧水を利用して、わさび田が作られています。

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浄蓮の滝で記念撮影。

3日目は柿田川湧水を中心とした、火山の恵みに焦点を当てます。約1万年前の富士山の噴火で流れ出した溶岩の南端部にあたるのが三島溶岩です。愛鷹山と箱根の間の谷を流れ下って、三島駅周辺にまで到達しました。地下水はすき間の多い溶岩流の中を流れ、三島市のあちこちから湧き出しています。駅前にある楽寿園を見学した後、源平川沿いに歩き、柿田川湧水を見ました。

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まずは朝食前に、有志が宿泊した伊豆熱川の温泉の水と、海水の水質を調べました。

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楽寿園の小浜池は近年減少傾向にあるようです。この日も水位は-73㎝と、水は地上に出ていませんでした。2011年以来満水にはなっていないそうです。湧水に詳しい新高3にガイド代わりになってもらいました。

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楽寿園の中には三島溶岩が至る所に露出し、縄状溶岩や溶岩塚なども観察することができます。

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楽寿園では地上に出てきていなかった湧水ですが、地下にはきちんと存在しており、それが源平川として流れ出しています。ここでも簡単に水質を測定しました。

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柿田川湧水は一日の流量が100万トンにものぼり、東洋一の水源ともいわれます。

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柿田川は日本一短い一級河川で、長さはわずかに1.2㎞しかありません。水はすべて富士山からの湧水です。写真の奥のところで、狩野川と合流しています。

3日間お疲れさまでした。伊豆半島ジオガイド協会のガイドさんや、宿の方、バスの運転手さんなど、さまざまな人のおかげで、無事に伊豆半島の地学的なおもしろさを楽しむことができました。この場を借りてお礼申し上げます。

以下、参加した新中2の生徒の感想です。

まず、1日目の大室山は、その大きさに圧倒されるとともに、スコリア丘であるということに驚きました。また、城ヶ崎海岸では、柱状節理を間近で観察することができ、なぜ柱状節理は整った形をしているのか疑問に思いました。この日は火山の凄さに改めて気付くことが出来ました。

2日目は浄蓮の滝、白鳥山、旭滝、下白岩へ行きました。火山の恩恵、伊豆の形成について学び、実際に見てみると文面で見たことを理解することが出来ました。この2日目で、火山の活動によってできたものを見ていくと、火山に対するイメージが少し変化したと思います。

3日目は、楽寿園と柿田川へ行き、富士山から噴出した三島溶岩と、それによりつくりだされた湧水を見学しました。私は柿田川へ初めて行ったので、湧水が湧いている場所がとても大きく、複数箇所で湧いていることに驚きました。また、縄状溶岩を授業でやったので、実際に見ることで理解を深めることが出来ました。

最後に、3日間の感想をまとめると、授業や書籍などで見聞きしたものを実際に見ることで理解を深めることができ、地学への興味関心が再びわいた、驚き続きで充実した3日間だったと思います。