第11回数学科リレー講座開講のお知らせ

2020.07.16

  • KSプロジェクト
  • 数学科

今年も夏期講習期間の最終週に、数学科リレー講座を開講します。ただし、今回は1テーマではなく、6日間のうち、最初の3日間に「対数」、その次の3日間に「3次方程式の根の公式」を扱います。それでは、それぞれの講座の内容を紹介します。

【対数発明400年記念講座】

「コピー用紙を42回折りたためば、その厚さは月まで達する」
このようなお話を聞いたことはありますか?一見信じられないかもしれませんが、「対数」という道具を用いることでその真偽を確かめることができます。対数を非常に大雑把に説明すると、「ある決まった数をくり返し掛け算して別の数を作るときの、掛け算を繰り返す回数」のことです。これだけではあまりイメージが湧かないかもしれませんが、対数の発見によって、天文学や航海術などにおける膨大な計算量が画期的に削減されたことが知られています。これを以て、数学者のラプラスは、「対数は天文学者の寿命を2倍にした」という言葉を遺しています。

対数の概念は16世紀末から17世紀初頭にかけて、ジョン・ネイピアやヨスト・ビュルギによって生み出されました。そして400年前の1620年、エドマンド・ガンターによって対数の値を長さに換算した目盛りを持つ物差しを利用し、積・商などの計算を簡単に行えるようにした対数計算尺が発明され、対数は煩雑な計算にかける労力を大幅に減らせる道具として広く認知されることになりました。つい数十年前まで計算尺は計算機として大活躍し、例えばエッフェル塔(1889年完成)や東京タワー(1958年完成)も計算尺を用いて設計されたものです。

講習では、対数の歴史から始め、指数や対数について演習を交え丁寧に説明していきます。演習中は中学の各学年の数学の先生が見てくれるので、中1や中2の皆さんも安心してください。最終日には、まず現実問題への応用を紹介しますが、その際に地学科の先生(中1の担任の先生です)にも登壇してもらい、実習を通して、マグニチュードなど地学への応用を説明してもらいます。さらに、数学的な応用として、対数によって定まる「分数次元」を持つフラクタル図形についても解説します。フラクタル性を持つ地球科学的構造についても地学の先生から紹介してもらいます。

昨今新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていますが、このような感染症の振る舞いを視覚的に理解するために、片対数グラフというものがしばしば用いられています。いま、「世界を知る」ためにも、対数について学んでみませんか?

【3次方程式の根の公式発見500年記念講座】

コロナ禍下にあって、京大望月教授のABC定理の専門誌への掲載は、数学史上に残るまさに偉業と申せましょう。この定理を利用すれば、解決までに約350年を要した、かの「フェルマーの最終定理」も容易に証明できることは多くの報道の通りです。しかし、解決までの道すがらで得られた珠玉の命題の数々、そして数多の数学びとの情熱に心揺さぶられる方は多いことでしょう。

さて、この歳月のおよそ十倍、解決まで実に3000年以上を要したのが3次方程式の根の公式の発見であり、それを(ある特別な場合に対してではありますが)最初に発見したとされるのが、イタリアのボローニャ大学教授であったシピオーネデルフェッロでありました。時に1520年であったとのことで、丁度今年は500年目にあたります。3次方程式の根の公式の発見に対し、物理学者ファインマンは最大限の『賛辞』を呈しています(アテネを訪問した時の講演による)。これを記念して、毎夏恒例の数学科リレー講座の第11回目は、『3次方程式の根の公式発見500年記念講座』を開催いたします。

アーメスのパピルスに記されていたことで有名な1次方程式の根の公式の発見から19世紀のアーベルによる5次方程式の不可解性に至る代数方程式の研究の通史から始め、数学史上最も人間臭いドラマのひとつとされている有名な「タルタリアとカルダノの先取権論争」の紹介、そして、中1の皆さんでも予備知識なしで3次方程式を解けるよう極めて具体的に準備と説明をした上で計算練習を行い、最後にこの方面の展望をお伝えする、いわば「花も実もある」楽しい講座にする予定です。

中学1年生の皆さん、この夏、小学校の算数とはひと味違う「趣」を感じにきてください。