地学巡検「長瀞で見る地球活動」

2022.11.08

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理科・地学では、実際の自然の姿を自分の目で確かめるために、例年、中学生を対象にした野外実習を行ってきました。

ここ最近はコロナ禍の影響で実施を見合わせておりましたが、本年度は対象を全学年にして、11月1日の創立記念日に「長瀞で見る地球活動」をテーマとした巡検を実施しました。

埼玉県秩父・長瀞地域において、中生代(数億年前)の変成岩や新生代(約1500万年前)の堆積岩からなる地質・地形を観察し、この地域がかつてどのような環境だったか、どのようにこの場所が形成されてきたかを考え、さらには、地球表層や日本列島の形成史について想像を巡らせました。

中学生18名、高校生13名、合計31名の参加者で、以下の通りにまわりました。

 

【STOP 1.埼玉県立自然の博物館】 ポイント:岩畳や秩父盆地のできかた

明治以来、多くの地質学者たちがフィールドワークに訪れ、
日本の地質研究の出発点となった長瀞は、「日本地質学発祥の地」といわれる場所です。

まずは、博物館で秩父・長瀞地域の成り立ちや、見られる岩石などについて学びました。

【STOP 2.長瀞岩畳周辺】 ポイント:三波川変成帯,虎岩,岩畳,秩父赤壁,四十八沼,白鳥島の横臥褶曲

その後、実際に荒川岸に降りて岩石を観察しました。いろいろな種類の礫を探して分類してみたり、岩石にみられる変形構造をスケッチしたりしました。また、岩畳のでき方を考えたり、河川地形の観察をしたりもしました。

【STOP 3.美の山展望台】 ポイント:秩父盆地の地形,河岸段丘

美の山展望台では、昼食をとるとともに、秩父盆地の河岸段丘を観察し、どこが段丘面になっているかを地図で確認しました。

【STOP 4.前原の不整合】 ポイント:秩父北帯,秩父盆地層群,不整合,基底礫

次に「出牛‐黒谷断層」を観察する予定でしたが、道路が思いがけずバスの通れない幅に狭まってしまっていたために、

予定を変更して「前原の不整合」を観察しました。

ここでは、秩父北帯の岩と、約1700万年前に誕生した古秩父湾の岩が接する不整合を身近に見られます。

露頭には示相化石であるカキの化石があり、河原に落ちている礫の中に二枚貝の化石を見つけた生徒もいました。

【STOP 5.取方の大露頭】 ポイント:秩父盆地層群,第四紀段丘堆積物,タービダイト,スランプ褶曲,傾斜不整合

最後に訪れた取方の大露頭では、傾斜不整合を観察し、スランプ褶曲のでき方を考えました。

はっきりとわかる傾斜不整合に感嘆の声を上げている生徒もいました。

以下、参加生徒(高一)の感想をご紹介します。

今回の巡検で、私は不整合というものを実際に初めて見た。順番でいえば前原の不整合を先に見たのだが、取方の大露頭ではそれをはっきりと目にすることができた。じっくり目を凝らしてみるまでもなく、地層の傾きが上と下とで全く異なっているのがわかった。今回の巡検は、このような地学の授業で教わったことを初めて実際に感じる体験の連続だった。石灰岩やチャートを河原で見つけたり、岩畳の中でポットホールを発見したり、基底礫岩を触ったり、地学の内容を現実に確かめることができた、

それと同時に、先生のおっしゃっていた「教科書の一行が書かれることの重み」も感じた。前原の不整合の不整合面を見分けるのは難しかったし、取方の大露頭のスランプ褶曲がどのように形成されたかは中々思い描くことができなかった。しかし、実際には自分が見てきた場所を、人々が観察し考察を重ねたからこそ、地球の仕組みや歴史が解き明かされているのだ。また、昔地球の表面にあった地層は地下深くに眠ってしまっているし、掘り起こして調べようとしても深さには限度がある。「地球の窓」といわれる秩父の地下数十キロの変成岩が地表に露出した理由は明らかになっていないということにはとても驚いた。このような環境の中で、人々が昔の地層が現れた場所をかけずり回り、地道に研究を積み重ねていったことで、今自分が地球の仕組みや昔の姿を捉えることができているということに感慨を覚えた。

取方の巨大な露頭は、長い地球の歴史を考えると、改めて人類の歴史がいかに短いか感じられるし、人類は絶滅したものも含めたありとあらゆる生物の中の一種でしかなく、人類もやはり永続する存在ではない、という印象を私に与えた。それでも、地球の歴史を知っているのは人類だけだと思う。私も今回の巡検で岩畳や河原の石を観察したり、地学的な場所を訪れて少し地球の歴史を感じられたことに、僅かながら一地球上の生物としての誇りを感じた。