Summer Workshop vol.1 〜夏の演劇入門〜

2025.08.16

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 この夏「Summer Workshop vol.1 〜夏の演劇入門〜」と題し、3日間で演劇を創って発表するワークショップを実施しました。ファシリテーターには、劇団青☆組を主宰されている吉田小夏さんをお招きし、青☆組の俳優の方々にアシスタントとして参加していただきました。本校以外の学校にもお声がけし、4校合同で実施することができました。

 実施までの経緯について、当日パンフレットに寄せた文章から引用します。

〈海城中学高等学校では、価値観の異なる他者と協働して問題を解決する能力、対話的なコミュニケーション能力などの向上をねらいとし、授業の中で演劇WSを実施してきました。授業時間内で実施するWSは基本的に同じ学年の仲間と一緒の活動になるので、WSを続けるうちに他学年の学生と活動するなど、より多様な他者と出会う場を創れないかと考えるようになりました。そして多様な他者を考えた時に、そもそも本校の学生とだけではなく、他校の学生と一緒に演劇を創るWSを夢見るようになりました。今回、様々な条件が整い「vol.1」として、4校合同のWSを初めて実施することができました。中学2年生から高校2年生まで33名が参加しています〉

 様々な学校の学生が集まって実施できた成果についても、同じように引用します。

〈さて、少し前のお話です。2012年9月28日朝日新聞朝刊に、東アジア諸国との芸術文化の交流が領土問題によって妨げられてしまうことを憂慮する村上春樹の文章が掲載され話題になりました。村上は国家間の芸術文化交流が閉ざされてしまうことを「国境を越えて魂が行き来する道筋」が塞がれることだと述べ、その危険性を指摘しました。13年前に村上春樹が語った国境を越えて人と人とを繋げる芸術の力。思えば私は演劇という芸術の力を、演劇WSを通して何度も強く感じてきました。演劇WSに参加する学生たちは、演劇という芸術に楽しく取り組みながら心を通わせます。「仲良く」なります。大袈裟に言えば、互いの「魂が行き来する」ことがあります。この夏、わずか3日間のWSの中でも、初めて出会った価値観の異なる他者同士が、演劇を通して心を通わせるような場面をいくつも見ることができました〉

 参加した生徒が書いてくれた感想を紹介します。

「吉田小夏さんから指導を受けて、声の出し方が自分でも驚くほど変わりました。印象に残っているのは、声の大きさと、声の届きやすさはイコールで結べないという指摘です。どこに声を届けたいのかを意識して、つま先から頭までを聞き手に向けると小さな声でも声が拡散しないというのはすごく納得して、これは演劇だけでなくて日常生活から使えるなと思いました」

「演技する楽しさは元々感じていて、人前で自分を表現することは元々好きな方だったのですが、今回を通して台本作りの楽しさに気づくことが出来ました。僕は人とああでもないこうでもないと議論するのが好きなので、どうすれば上手く伝わるのか、どうすればこのなんとも言えない気持ちを表現できるのかと悩み、答えがあるようでないような問いをみんなで考える時間がすごく楽しかったです」

「朗読劇を見に来て下さった方々の前で発表した時に泣いていた方がいたというのは非常に驚きました。劇やドラマをみて泣くということは全く珍しいことではないですが、実際に自分達の劇の前で泣いている方を目にすることはその事実を踏まえても驚きは隠せなかったです。ですが、朗読劇をしている自分や自分達の気持ちだけでなく他の人の気持ちをいい方向に動かすことができたのは、今でも非常に誇らしい気持ちで、それだけでも今回の朗読劇で学びや意味は十分すぎたと思います」

「他校の方々が来てくださったり、学年の制限が少なかったり、初めてお会いする講師の方々がいらっしゃったり、というので初対面の人が多く、しかも年齢や性別というものが多種多様な中で、どう話していこうかというのは、初めは純粋に戸惑い、また、そんな中で上手く演劇を作ることができるのだろうかという心配もしました。しかし、いざワークショップが始まっていくと講師の方々がその日の最初にお互いの名前を呼び合う練習の時間を設けてくださるなど、場の緊張感を解く工夫をいくつか凝らしていただいたことや他校の方々が積極的に話しかけて下さったおかげもあって、その心配は杞憂に終わりました。一番自分が印象的に思っていることは、60秒の演劇を作る上で同じチームになった中学3年生の後輩達に、今思うと無茶に近い「タメ口でいいよ。」と僕が言ったのに対して次の会話からすぐにタメ口で話し始めてくれたことは、とても嬉しかったし、ありがたかったです」

「僕は戦争が始まったことを告げる役の1人だったのですが、吉田さんが、私たちが朗読する場面で作りたい雰囲気とそのための読み方の提案というのを丁寧にしていただいたことで、僕らの朗読する場面はそれまでの少し明るく爽やかなイメージを変えるという役割が付加されたように思います。全体で言うと、間の取り方に関するアドバイスを皆細かくいただくことが多かったように感じます。間の取り方を少し変えただけで劇の全体としての印象が変わっていったのは印象的でした」

「初対面の人たちと劇を作っていくというのは初めてで、やはり緊張してしまい、はじめはコミュニケーションを円滑に進めることができませんでした。しかし劇を作っていく中で、皆より良い劇を作るという共通の目標を持っていることがわかり、それからは同じ志を持つ仲間として打ち解けていくことができました」

「今回のワークショップで1番印象に残ったことは、演劇の話を通じて、他校の生徒と親睦を深められたことでした。ワークショップを始める前はあまり話さずに終わるのではないかと思っていましたが、3日間という短い時間の中で仲良くなり、いろいろなことについて話すことができました。とても素敵な体験になったと思います。このような機会を提供してくれた吉田小夏さんや他のスタッフさんや先生方にも感謝を伝えたいです」

 生徒たちの感想を読むと、3日間楽しみながら演劇に取り組み、他者と心を通わせ合いながら様々なことを体験的に学び取っていたことが分かります。この夏の経験は、生徒たちにとって大変意義深いものになったようです。今後もこのような機会、このような場を創っていけたらと願っています。

 最後になりましたが、ワークショップの企画段階からご協力いただいてきた吉田小夏さんと青☆組のみなさま、ご協力いただいた学校の先生方に厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。